御深井焼(おふけやき)とは|尾張徳川家・名古屋城の御用窯の特徴、歴史を解説

御深井焼は愛知県の名古屋城で作られていた陶磁器で、尾張徳川家の御用窯でした。
しかし、御深井焼は美術館での収蔵品も少なく、また名古屋城でなく岐阜県の美濃窯で焼かれていたという説もあり謎に包まれている部分も多くございます。
このページではそんな御深井焼について分かりやすく、所蔵美術品の写真を用いて特徴や歴史を解説いたします。

御深井焼(おふけやき)とは

御深井焼は現在の愛知県名古屋市、名古屋城内にあった尾張徳川家の御用窯およびその窯で焼かれた陶磁器のことを指します。
名古屋城の御深井丸(おふけまる)にあったとされることから御深井焼と呼ばれるようになったと一般的には言われております。
しかし、高火度の窯が名古屋城本丸に近い御深井丸にあることは危険であり、名古屋城の北側のお濠を挟んだ「御深井庭」あたりにあったと考えられます。
御深井庭があったとされる現在の名城公園には「御深井焼窯跡」と書かれた表札が立っております。

また、御深井焼は御深井の窯だけでなく、灰釉に長石を加えた「御深井釉」を使用し美濃窯や瀬戸窯で焼かれたものも指しました。
さらには御深井釉を使用せず「深井製」の印がある焼き物もあり、こちらも御深井焼と呼ばれておりました。

やや複雑ですが、御深井焼という言葉は幅広い意味で使われておりました。

御深井焼の歴史

御深井焼は17世紀に主に焼かれます。
その当時、美濃窯や瀬戸窯で使い始められた灰釉を用いた陶磁器を焼くために、美濃の陶工を集め、尾張藩が焼き物を作らせ藩の産業としました。
寺院や大名、公家などの有力者に贈答するための品として茶具、仏具や飲食器などの様々なものが焼かれます。
開窯については、名古屋城の初代藩主・徳川義直により寛永年間(1624~1644)とする説や、2代藩主光友の時代(1650~1700)とする説があります。

そして、前述のとおりこの御深井焼はほぼ同時期に美濃でも焼かれたと考えられます。
「御深井釉」は特段特別なものではなく、灰釉に長石を加えたもので青磁に近い性質の釉薬です。
元々は美濃窯の技術を用いていたわけで名前のみ逆輸入をされたものとなります。

有力者のための焼き物をつくった御用窯である「名古屋城の御深井焼」と庶民のための「美濃窯の御深井釉の焼き物」の二つと考えられます。

御深井焼の特徴

御深井焼に使われる御深井釉は灰釉系の釉薬で、長石に灰を混ぜたもので、焼成中に釉薬に含まれる鉄分により淡い緑色や黄緑色に発色します。
青磁に近い性質をもったもので「美濃青磁」の別名でも呼ばれます。
ガラス質がとても厚く、釉溜まりはビードロ調の濃い緑色の発色と、細かな貫入が入るのが特徴的です。

御深井焼の釉役溜まりと菱形貫入

御深井焼の釉役溜まりと菱形貫入

胎土は時代により違いますが、黄白色の陶器質のものが多く見られます。

当館で見れる御深井焼

御深井焼 桐菊文水指

御深井焼 桐菊文水指

円形の高台は2重で、そこから腰にかけて緩やかに広がり、胴から口にかけて直線的に四角形に変化します。
肩の4面には二種の模様が施されて、一つは菊紋であり、もう一つの模様は豊臣家をはじめ天皇より授かった家紋の「五三桐(ごさで、いずれかの大名家に贈られたものの可能性があります。
釉溜まりは、淡い緑のビードロ調を成し、全面に入った菱形貫入と相まって鉱石のように美しい景色です。

↓この陶磁器の詳細はこちら↓

 

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伊山大策

伊山大策

名古屋ビジュアルアーツ写真学科在学中より瀬戸焼の陶芸作品撮影を続ける。11年前に愛知の古美術研究にて陶磁器の知識を学ぶ。写真スタジオに3年勤務したのち、広告やWEBサイトの制作を手掛けその経験を活かし、古陶磁美術品の良さを広めるために当サイトを開設いたしました。

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