骨董品の陶磁器の中でも注目度が高いものとして壺がございます。
テレビドラマなんかでもお金持ちの家に飾ってあり、1000万円の壺が~なんてシーンを見たことがあるので、高いものというイメージはあると思います。
そんな壺ですが実はただの日用品であることはご存知ですか?
この記事ではそんな壺についてご紹介させていただきます。
陶磁器の壺とは
陶磁器の壺は古くからある器形で、大きく膨らんだ胴に口は窄まってはいるもののやや大きく開いた形をしています。
元々の用途は食料や調味料、水などの貯蔵容器として使用された他、そのものを火にかける煮炊き用の調理具として使用しました。
また、小さなものだと火葬した遺骨を納める骨壷もございます。
日用品であったものですが、宮廷で使われるような装飾を施したものもあり、宴や儀礼などでも用いられます。
その後、観賞用としてその大きな器面を生かし、染付や絵付けをした見た目が華やかな壺が登場し、壺は陶磁器の中でも最大級の大きさを持つため高価とされました。
一般的には壺はこのような目的で作られたものですが、そのシンプルな形ゆえもっと幅広く使われております。
小型のものであれば花器として使う方もいらっしゃいます。
壺の形の定義
基本的には「1.底が狭く」「2.胴が膨らみ」「3.口が窄まる」という形をしています。
大きさも高さ10cm程度のものから大きなものだと1mを超えるものもあり、大きさにより用途が変わります。
しかし、壺の形は多種多様であり胴の膨らみが丸いものから上方向に長いものなど様々です。
口を窄まらせることで外気に触れにくく、少量の出し入れがしやすく、食糧の保存に適しております。
壺と甕(み、かめ)
壺に似たものに甕があり、これは壺に似て胴が膨らんでいるものの、口がほとんど窄まっておらず大きく開いたものです。
梅干しなどの食料や液体の調味料を入れ、外気に触れないように蓋がついているものもございます。
壺との区別が困難であり、甕を壺と名をつけられているものもございます。
壺と瓶の違い
いわゆる花瓶や酒瓶などの瓶と壺の違いも実は曖昧です。
しかしながら幾つか特徴を挙げると
- 瓶の方が壺より細い傾向にある
- 口が窄まる形の場合、瓶の方がより狭い
- 瓶は首が長いものもあるが、壺はほとんどが短い
といったことが言えます。
様々な壺の形
前述の通り壺の形は様々ですが、瓶ほど形に対して名称は付けられておりません。
使用されていた用途や釉薬、装飾などによって名称が付けられていることがほとんどです。
扁壺(へんこ)
胴体が扁平なツボのことで、上から押しつぶしたような形状のものと、横方向から潰した形のものがございます。
主に水瓶や酒瓶として使用されました。
小壺(こつぼ)
小さなツボのことで、規定はございませんが大きさは10cm未満のものがほとんどです。
調味料を入れたりする他、蓋付きのものは骨壷にも使用されました。
双耳壺(そうじこ)
壺に装飾として口から肩にかけて耳をつけられた物です。
中国の唐時代から宋時代にかけては龍や鳳凰を用いた大きな耳が付けられ他ものもあり、宮廷で使用されました。
清朝では比較的小さな耳となる傾向がございます。
四耳壺(しじこ)
肩に4つの耳がついた壺です。耳の形は貫耳など様々ですが比較的小さめのものが主流となります。
中国陶磁で多く作られ、武士などの人気も高まり日本でも平安時代末期の猿投窯で生産されました。
主に保存物の貯蔵用になります。
蓋付き壺(ふたつきつぼ)
ツボの口を覆うように蓋のついた壺で、空気との接触を防ぐためより食料などの保存性に優れます。有蓋壺(ゆうがいこ)とも言います。
大きさも様々で30cm前後の大型から10cm未満の小型のものまでございますが、どちらかというと小さいものが多いです。
油壺
壺の中でも特に小さなものでサイズは高さが5cm程度で横に楕円に広がった形状です。
口も5mm未満と小さく、油のような液体を数滴出すことに適しています。
現代では一輪挿しに使用することもございます。
壺の歴史
壺の形はとても実用的のため、古くから現代に至るまで作られ続けます。
新石器時代の中国でには土でこねて形づくり、火で焼き固めた壺が作られております。
青銅器時代にも作られており、春秋時代後期の青銅器の壺が博物館に収蔵されています。
地中海沿岸のレヴァントでは「カナーン壺」が作られ、その模倣としてエジプトでアンフォラが制作されるようになりました。
日本では縄文時代のころから壺形の土器は作られ、幾つかの遺例は博物館に収蔵されています。
この頃の壺形土器は保存容器だけでなく、調理器具としても使われていたとされています。
それから陶磁器の時代に移っても変わらず壺は作り続けられ、明時代以降には染付や色絵などの磁器でその大型の器面が生かされるようになり、日用品や実用品であった壺が美術品へと進化を遂げていきました。
当オンライン美術館おすすめの壺
鈞窯 澱青釉紫斑 双龍耳壺
中国宋代五大名窯のうちの一つである鈞窯(きんよう)で作られた壺で高い脚に丸い胴、口は大きく開きます。
そして口から腰にかけて大きな竜の耳が備えられます。
宮廷にて位が高い人に使われていたものと考えられ、実用品よりは美術的な価値の高いものです。
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景徳鎮 白釉蓋付き鉄斑壺
景徳鎮窯で作られたと考えられる、白磁の蓋付き壺です。
薄く作られた器体にやや青みがかった釉薬、鉄による斑点が描かれております。
ひだとヘタのついた蓋ですがきっちりとはまる形に作られており、とても精巧な作りです。
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御深井焼 桐菊文水指
水指という名をつけているものの形は変形した壺です。
円形の高台から腰にかけて緩やかに広がり、胴で切り替わり口にかけて直線的に四角形に変化します。
肩の平らな4面には二種の模様が施され、一つは長寿を願った「菊紋」、もう一つは豊臣家「五三桐(ごさんのきり)」です。
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陶磁器の中で壺は主力の品であり、古美術品としても多く残された種類の一つです。
基本的には大きいと価値が高まる器形ですが、大型のものは保存の難しさから意外と残されておりません。
また、実用品であったため装飾がされているものも希少とされています。
当美術館では様々な壺がございますのでよろしければご覧くださいませ。
骨董品の壺の購入と入手方法
壺は時代や種類、大きさなど多様すぎるくらいで、どのような壺が欲しいのかを色々とインターネットや書籍で調べてみると良いと思います。
人気が高いのは中国の唐時代〜宋時代の青磁の壺ですが、正直この時代の壺は大物は綺麗な状態で残っているものはほとんどなく、現存するものは20cm以下がほとんどです。
しかし、大きめではないため比較的低価格で購入ができ10万円前後からございます。
もう一つ人気が高いのは明時代から清時代の青花や色絵磁器による壺で、大型のものは美術品の価値がとても高く、多くのコレクターに愛されています。
しかし、この時代の色絵時期は近代から現代に多く模倣がされており、見分ける力が必要です。
本物はとても高価なものなので数万円で買えることはないと思ってくださいまた、朝鮮半島では高麗時代から李氏朝鮮時代に実用品として壺が多くつくられました。
刷毛目や粉引などといった素朴さな壺は中国と違い味わい深く人気です。
朝鮮物は比較的手に入れやすい価格帯で5万円程度からございます。
壺は数は沢山ございますので骨董市や骨董屋、またインターネットなどでとにかく自分の気に入る壺を探してみてください。
状態が良い物であれば実用も十分に可能です。
当美術館でも公式ストアで厳選した壺を販売しておりますので、よろしければご覧くださいませ。
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