陶磁器はその利用シーンに合わせてさまざまな形が作られました。
加工のしやすさから大量生産がしやすく、焼成後は強度も高く丈夫であったことから、日用品に多く用いられます。
茶碗、皿、壺、瓶などは現代においても日常にある種類ですが、古陶磁になると現代ではなかなか目に触れることのない形の陶磁器がございます。
これから陶磁器を鑑賞する方、骨董品を購入する人に向けて、陶磁器にどんな種類の形があるのかを解説いたします。
目次
碗・茶碗(わん・ちゃわん)

日本の瀬戸黒茶碗
碗は円形の深さのある器で、飲料や飯、汁物を盛るために使われました。
大きさはそこまで大きいものはなく、直径10~15cm程度のものがほとんどです。
茶碗は本来お茶を飲むための碗ですが、現代日本においてはご飯を盛る飯碗の意味でも使われます。

中国建窯の緑天目茶碗
中国では喫茶に使う小さな碗を盞(さん)と言います。
また、煎茶道で使われる直径10cm以下の物を小碗、もしくは煎茶碗といいます。
托(たく)・盞托(さんたく)

越州窯 青磁花口盞托
喫茶用の茶碗を乗せる土台を乗せるための土台を托と言い、その托と茶碗を合わせて盞托と言います。
装飾として豪華に見せるためでなく、高台(底)が小さい器を安定させるためのものでもあります。
托は陶磁器だけでなく、木でも作られます。
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皿(さら)・碟(せつ)・盤(ばん)

汝窯青磁 菊弁紋碟
平く浅い器で、食物を盛るためのものとして使用をされました。
大きさは小さいものは幅10cm以下のものもあり、大きなものでは幅30cm以上になります。
形は円形のものから四角形のものまで様々です。
中国や朝鮮では小さめのものを碟・大きめのものを盤(ばん)とも言います。
大皿
直径30cmほどを超える皿を大皿と言い、日本でも江戸時代以降に有田焼や九谷焼などで作られました。
その大きな器面を活かして豪華な絵付がされ、多くは大名や藩からの注文品であったため、同じ模様は一つとして無かったとされます。
皿についてはこちらでも詳しく解説医しております。
>>陶磁器の皿とは|形状の種類と名称、購入方法も紹介
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壺(つぼ)

鈞窯 天青釉紫斑 双龍耳壺
大きく膨らんだ胴に比較的大きく開いた口を持った容器で、食糧の貯蔵や、水や酒などの飲料の運搬に使用されました。
形状や大きさも様々で、小さいものは小壺ともいいます。
開口部には蓋がつけられるものもございました。
壺はその器面の大きさから美術品として絵を描くための台とも使われております。
罐(かん)

龍泉窯青磁陽刻牡丹唐草文大罐
壺に似た容器で、食品を保存するために用いられ、蓋がつきます。壺に比べると背が低く、口も大きめです。
罐とつけられる美術品は多くございますが、定義は曖昧です。
油壺(あぶらつぼ)

青磁象嵌油壺
手のひらサイズで小さな口をもったもので、整髪用の油などを入れるのに用いられました。
朝鮮半島や日本の瀬戸・美濃で作られていました。
壺についてはこちらでも詳しく解説医しております。
>>陶磁器の壺とは|形状の種類と名称、歴史を解説
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鉢(はち)

南宋官窯青磁鉢
皿より深く、壺よりは浅い口の開いた器で、食器として使用されました。
胴は丸みを帯びており、大きさも15cmから大きいもので20cmを超えるものが多く、大きな食材を盛ることができます。
中国、朝鮮で作られ、日本でも有田焼などの絵付の鉢に名品がございます。
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瓶(びん・へい)

白薩摩御庭焼花瓶
背が高く胴がやや膨らみ、口が小さい容器を瓶と言います。
使用目的は多様であり、花を生ける花瓶や、水や酒を液体を入れる瓶として使用がされます。
骨董品としては祭器としても多く使われております。
中国ではへいと読みます。
瓶は陶磁器の中でも一番と言っていいほど様々な形があり、特別な名称がつけられるほどです。
陶磁器の瓶の形状については下の記事にて詳しく解説しております。
徳利(とっくり)

高麗青磁徳利
利は小型の瓶で、主にお酒を注ぐために使われます。
鎌倉時代まで使われていた瓶子に変わり、口がやや大きめで使いやすく徳利が酒器として使用されるようになります。
小さめの瓶を徳利として使用することもございます。
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水注(すいちゅう)・水差し(みずさし)

青磁水差し
瓶のように膨らんだ形状で、胴にやかんのように注ぎ口が付くものや、口事態が注ぎやすい形になっているものなどがあります。
蓋はあるものないものがございます。
水やお酒を注ぐために使われたものですが、日本では茶道で水指に水を継ぎ足すために使われます。
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水指(みずさし)
上記の水差しと混同しやすいですが別物です。
主に筒状で上部が大きく開いた容器で、茶道で茶釜に水を足したり、茶碗や茶筅を洗うための水を溜めてきます。
蓋がつけられ同じ焼き物のものは共蓋、漆物のもの塗蓋と呼びます。
水指のほとんどは日本製です。
洗(せん)・筆洗(ひっせん)

越州窯筆洗
深さがあり、大きく開いた容器を洗といいます。
碗と比べて胴が垂直なこと形状が多く、鉢や盆との区別はやや曖昧です。
その名の通り、物を洗うためのもので、主には筆などを洗っておりました。
大きさは大小様々であり、形も自由なものが多く、桃形などもございます。
中国の南宋以降や朝鮮半島の高麗時代以降に多く作られておりました。
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水盂(すいう)

李朝水盂
小さく平く膨らんだ胴に口が大きく開いた形で、中に水を入れて使います。
書道の際に墨を磨るための水貯めておき、小さな尺で移します。
手のひらサイズの小さなものになります。
中国で主に作られ、朝鮮半島では水滴に流行が移るまで作られました。
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水滴(すいてき)

総辰砂桃形水滴
中が空洞の本体に小さな注ぎ口がついたもので、中に水を入れて使います。
書道の際に墨を磨るための水を注ぐための道具です。
サイズは小さく、そのほとんどが手のひらに収まるほどのサイズです。
水を注ぐための機能のみでいいため、形が自由であり、動物形や果実形などがあります。
主に朝鮮半島の高麗時代後期から李氏朝鮮時代に作られ、文具四宝とも呼ばれました。
水滴ついて下の記事にて詳しく解説しております。
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筆筒(ひっとう)

汝窯三足透筆筒
直径10cm程度筒状の形で書道や書画のための筆立てに使用します。
そのシンプルな機能から見栄えを重視することもでき、透彫りや青花などの装飾がされます。
中国、朝鮮半島で作られていますが、日本ではほとんど見ない形です。
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炉・香炉(こうろ・ろ)

中国南宋官窯 青磁魚耳炉
お香を焚くための容器で、上部が空いており、煙が出るようになっております。
蓋のないもの、蓋をするものがあり、蓋は獅子などの装飾がされているものや、金属製の蓋のものなど様々です。

日本 白備前獅子香炉
主に儀式や仏事に使うものであり、中国では祭器としても使われていたため、古代青銅器の形をしたものもございます。
大きさは大小様々ですが、大型のものはとても価値が高く希少です。
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茶入(ちゃいれ)
高さが5~10cm程度で小さな壺で、濃茶のための抹茶を入れておく容器です。
日本の茶の湯で使用され、肩衝、文琳、茄子などと形により特別な名称がつけられるほど愛されていました。
褐色の釉薬で素朴な印象のものが多く、象牙の蓋ががつけられます。
初期は中国で作られた唐物ですが、日本の瀬戸でも作られるようになります。
杯(はい)

中国 汝窯青磁双耳三足杯
碗のように飲料を注げる深さのある器で、主に飲酒のために使われました。
杯は碗と違い装飾されていることが多く、耳や足などが備えられます。
中国、朝鮮半島で青磁によく見られ、馬上で片手で飲みやすいよう長い足をつけた馬上杯などがございました。
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合子(ごうす)・文盒(もんごう)

朝鮮 青磁象嵌合子
上からは円形で横から見るとそろばんのような形であり、上下に分割できる容器です。
中に物を入れることができますが浅く、練香や化粧品、薬などを入れておりました。
中国の他、特に朝鮮の高麗時代で多く作られ、全面に象嵌などの装飾が施されます。
置物

中国 磁州窯鳥形置物
動物や人などの置物も焼かれておりました。
中国では唐時代以前にはお墓に入れるための副葬品として作られますが、時代と共にその文化はなくなり、北宋時代には玩具として作られるようになります。
日本でも岡山の閑谷焼きで獅子等の置物が作られておりました。
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琮(そう)

中国 南宋官窯 青磁琮形瓶
四角の柱状で長軸方向に円形の穴が開いており、角に装飾がされたものです。
古代中国にて祭祀用に使われた玉器をもした物でと言います。
高さはさまざまで、低いものは洗、高いものは瓶として使用がされます。
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盆(ぼん)
やや深さのある器で形は楕円形で下に足が備えられることものが多くございます。
汝窯青磁に名品がございますが、その用途は明確にはわかっておらず、筆洗とも動物の餌入れとも、そして球根の栽培をしていたとも言われています。
日本に似た形の陶磁器は花生けとして使用がされています。
枕(まくら)
陶磁器による枕で、頭に沿うよう少し中央が窪んでおります。
中国の唐時代からみられ、宋時代には華北一帯の窯で盛んに作られました。
陶磁器であり暑い夏場に適したものでした。
魔除けのために獅子などの装飾を施したものもございます。
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この記事でご紹介させていただいた様々な形状の陶磁器を多く取り揃えております。
購入だけでなく様々な形を見るだけでも楽しめますので、気になった方は是非一度ご覧くださいませ。
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