九谷焼は石川県を代表する陶磁器で、白磁に色絵による上絵付けが魅力です。
今なお続く九谷焼ですが、江戸時代に廃窯になった歴史から、古九谷と再興九谷に分けられます。
そして、現在の研究結果で九谷焼は佐賀県有田市の有田焼として焼かれていた可能性もあり、古九谷様式なる言葉も生まれます。
そんな少し複雑な九谷焼の特徴や歴史について、所蔵美術品の写真を用いて解説いたします。
九谷焼(くたにやき)とは
九谷焼は石川県の加賀地方で今でも生産されている陶磁器で、色絵による上絵付けが特徴です。
五彩手とよばれ、線書きをしたのち、緑、黄、赤、紫、紺青で豪胆な色付けがされ、厚みをもった和絵の具は美しい輝きです。
特に古美術品としての価値が高く、17世紀江戸時代前期に始められた「古九谷(古九谷様式)」と1800年頃に再興された「再興九谷」は注目されています。
100年近くの空白から再興される歴史などには不明な点も多く、ファンや研究者が多くいます。
九谷焼の歴史
九谷焼の歴史は前述の通り「古九谷(こくたに)」と「再興九谷(さいこうくたに)」に分けられます。
古九谷時代:江戸時代前期
九谷焼は江戸時代前期に誕生します。
大聖寺藩の初代藩主であり茶人でもあった前田利治が鉱山開発の際に、九谷村にて磁器に適した陶石を発見したことがきっかけとなります。
有田での作陶の技能を習得をさせた藩士の後藤才次郎により1655年頃に藩の産業として始められました。
陶石の産地であった九谷村に窯を築いたため「九谷焼」と呼ばれます。
しかし、九谷焼はおよそ50年後の1700年代初頭に突如として生産終了し廃窯となります。
理由は藩の財政難や政策の方向転換などあり定かではありません。
この頃に焼かれていた九谷焼を「古九谷(こくたに)」と呼びます。
ただし、色絵が施された古九谷焼の歴史は諸説あり、この頃の古九谷と呼ばれる陶磁器を分析した結果、佐賀県(有田市)で作られたものもあることが判明しております。
そのため古九谷と呼ばれるものは有田の初期色絵作品という説や、九谷と有田の複数の産地で同じ様式のものが作られていたという説もございます。
有田焼の九谷は「古九谷様式(こくたにようしき)」と呼び区分されます。
再興九谷の時代:江戸時代後期
江戸時代後期:再興九谷の時代
九谷焼の窯が廃窯されてから約100年後の江戸時代後期に再興されます。
加賀藩が京都より磁器職人である青木木米を招き、金沢の春日山に春日山窯が開かれこれをきっかけに九谷焼が息が吹き替えし、加賀の一帯に数々の窯が開かれます。
発祥である大聖寺藩内でも開かれ、中心人物である大聖寺の豪商・豊田伝右衛門により、九谷焼の窯跡の横に登り窯を築き、「吉田屋窯(よしだや」が興されます。
この吉田屋窯では古九谷の再現を目指し、古九谷に迫るほどの高い芸術性と品質の時期を焼きます。
その他にも赤絵細密画の「宮本屋窯」、色絵と金彩を焼き付ける「永楽窯」などの新たな窯が興り磁器生産が続けられます。
幕末期のこの時期に作られたものは「再興九谷」と呼ばれました。
新九谷〜現代九谷:明治時代以降
明治になると九谷焼は輸出品となり博覧会も出品され、ジャポニスム(日本趣味)として人気を博します。
「ジャパン・クタニ」として欧米を中心に世界各国で愛され、明治中期には日本の輸出陶磁器では第1位を占めるようになります。
西洋の技法や型押しの技術も利用され、獅子をはじめとする置物の製作も盛んになります。
こうして伝統的な美術工芸品として地位を確立した九谷焼は現代まで続いていきます。
九谷焼の特徴
古九谷、古九谷様式、再興九谷共に色絵陶磁器で、「上絵付け」による装飾を施しているのが特徴です。
上絵付けとは、本焼きした陶磁器の釉薬の上に顔料で模様を描き、再度焼成する技法です。
磁器質の白い土を用い、主に「呉須(ごす)」で藍青色の線描きをし、「五彩」と呼ばれる赤、黄、緑、紫、紺青の五色の絵の具を厚く盛り上げて塗ります。
この特徴は時期や窯により特徴に違いがあり、古九谷様式では線が赤いものもあります。
吉田屋窯のように五彩の内の赤を使わない「青九谷」、宮本屋窯のように赤絵金彩の「赤九谷」など多様です。
古九谷や再興九谷には、裏面高台内に「角福」の銘が入るものも多く見られます。
当館で見れる九谷焼
古九谷様式 色絵五三桐文方形小皿
有田焼の古九谷様式の方形小皿で、見込みには五三桐文を5つ色絵で斜めに配置され、赤の線描きに赤、黄、緑の絵具が丁寧に色付けされます。
有田焼(伊万里焼)の肥前楠木谷窯の古九谷様式と考えられ、裏面高台内には「角福」の銘が入ります。
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九谷焼 吉田屋窯 色絵菊唐草文小皿
「再興九谷」である「吉田屋窯(よしだやよう)」で焼かれた九谷焼の小皿です。
厚手の角形の小皿で、見込みには黄色・緑・紫・紺青の吉田屋の色を用い菊紋を中心に様々な幾何学模様が描かれます。
吉田屋窯では九谷焼の五彩の内、赤色を使わないため「青九谷」とも呼ばれます。
こちらも裏面に「角福」の銘が入ります。
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