湖東焼(ことうやき)とは|幻の名窯と呼ばれた彦根藩窯の違いや特徴、歴史を解説

江戸時代後期に彦根藩の御用窯として隆盛した湖東焼。
高品質で完成度の高い美しい染付や絵付の磁器が作られました。
しかし、藩の事情により約60年ほどで途絶えたため、幻の焼き物とも呼ばれています。
確かな技術力があるが、あまり知名度の高くない湖東焼の歴史や特徴について解説いたします。
最後に湖東焼の陶磁器を写真付きで紹介をいたします。

湖東焼(ことうやき)とは

湖東焼は江戸時代後期に日本の彦根藩の御用窯として開かれた窯および生産される陶磁器のことです。
湖東という名の通り、彦根藩が所在した琵琶湖東岸あたりにございました。

主に磁気を製造し、染付、赤絵や赤絵金彩、色絵、そして青磁などがございました。
作られた陶磁器は大阪を経由して江戸など全国に販売されたとされています。

1829年(文政12年)に彦根藩(現在の滋賀県彦根市)で生産され始め、藩営化されたのは1842年(天保13年)となります。

湖東焼の歴史

湖東焼は1829年(文政12年)に彦根城下の呉服・古着商の絹屋半兵衛(きぬやはんべえ)の主導により、古着商・島屋平助(しまやへいすけ)と彦根藩御蔵手代・西村宇兵衛とともにより開窯されました。
当時、全国的に盛業であった製陶業を興すべく、彦根に有田の伊万里焼の職人を招き、彦根城南の晒山に「絹屋窯」を開いたことが始まりです。

その後、窯を佐和山山麓古沢村の餅木谷に移し、主に磁器の生産続けますが、協力者の島屋平助らが抜け、絹屋半兵衛での単独経営になります。
苦しい経営ながらも、美しく華麗に作られた陶磁器は「沢山」や「湖東」の銘を記し、近江国内のほか京、大坂へ売り出されます。

1842年(天保13年)には彦根藩主・井伊直亮(いいなおあき)により召し上げられ藩直営となります。
湖東焼は直亮と次の藩主・井伊直弼(なおすけ)の治世下と続き、特に直弼は湖東焼に情熱を注ぎ藩窯は最盛期を迎えます。
しかし、1860年(安政7年)に直弼が桜田門外の変で亡くなると、政情不安の煽りで職人のほとんどが離散し窯は縮小を余儀なくされます。
このころ藩主であった井伊直憲(なおのり)と数人の職人により存続されますが、藩窯は2年後の1862年(文久2年)に廃止されます。
それ以降は民窯として幾つかの窯が存続していたものの、1895年(明治28年)までに全て閉鎖され湖東焼は完全に途絶えることとなります。
民窯からは60年、藩窯としては20年と操業期間が短く、伊万里や瀬戸に比べ製品の数が少ないため「幻のやきもの」と呼ばれるようになりました。

湖東焼の特徴

湖東焼は硬く焼きしまった土を用い、純白の器面に絵付けをした磁器が主な焼き物になります。

湖東焼 染付山水文獅子蓋菱形香炉

湖東焼の繊細な染付

絵付けの技法は藍顔料を用いた染付、赤の顔料を用いた赤絵、赤や緑で色付けした色絵、金で彩った金彩などがございます。
湖東焼の絵付けは緻密で豪華であり、湖東独特の模様を描きます。

他にも土の温かみを感じる陶器も作られます。
湖東焼では藩主の愛用品や贈答品に向けた高級品、藩の内外へ流通させるための日用品など様々な品が作られました。
染付、赤絵、錦手、金襴手などの手法を用いて文房具、茶器、飲食器が生み出されます。

当オンライン美術館で見れる湖東焼

湖東焼 金銀彩雲鶴文鉢

湖東焼 金銀彩雲鶴文鉢

器の外面に朱色の釉薬をかけ、銀彩で大きな鶴を、金彩にて波と雲を描きます。
鶴は顔と尾や足は黒顔料、翼は銀色で翼を輝かせる鶴であったものと考えられます。
しかし経年変化により銀が黒く酸化し、金色の雲の相まってって夕空を舞う鶴が影のようになり美しい景色となっています。

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湖東焼 染付山水文獅子蓋菱形香炉

湖東焼 染付山水文獅子蓋菱形香炉

菱形の胴を屏風のように見立て2面に縁取りをし、それぞれに絵柄の違う山水文が描かれます。
蓋にも小さな山水文を描き、頂部には小さな唐獅子を乗せ染付により色付けがされます。
純白の器面に細く繊細な筆致で染付が描かれ、湖東焼の質の高さを伺うことができます。

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江戸時代の陶磁器一覧

陶磁オンライン美術館では日本の江戸時代に作られた陶磁器を多数掲載しております。
特に湖東焼は江戸時代でも後期の窯で完成された陶磁器の技術を持っています。
他に代表的な伊万里焼や瀬戸焼などと見比べてみるのもおすすめです。
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伊山大策

伊山大策

名古屋ビジュアルアーツ写真学科在学中より瀬戸焼の陶芸作品撮影を続ける。11年前に愛知の古美術研究にて陶磁器の知識を学ぶ。写真スタジオに3年勤務したのち、広告やWEBサイトの制作を手掛けその経験を活かし、古陶磁美術品の良さを広めるために当サイトを開設いたしました。

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