桃山時代に美濃地方で茶人の古田織部により焼かれ始めた陶磁器です。
その時代には考えられない独創的な模様や形の陶磁器は多くの茶人に愛されました。
その技法はいまでもいくつかの窯で作り続けられています。
そんな歴史があり、人気の高い織部焼について、種類、歴史や特徴について解説いたします。
織部焼(おりべやき)とは
織部焼は桃山時代に美濃窯で焼かれた陶磁器です。
千利休の弟子である大名茶人の古田織部(ふるたおりべ)の指導により、当時志野焼などを焼いていた美濃窯で創始されます。
利休の静謐さと対照的で古田織部の体現したい動的な「破調の美」の茶の湯に合う陶磁器が作られ、織部好みの奇抜で斬新な形や模様の茶器や食器などが多く作られました。
緑釉に絵付けをした青織部を代表とし、黒織部、織部黒、赤織部、志野織部などが様々な試みがございました。
陶磁器の種類を表す名称は地域名から取ることが多いですが、織部焼は人名を由来とした数少ない焼き物です。
南蛮貿易により中国南方からもたらされた華南三彩の交趾焼(こうちやき)を元にしております。
織部焼はその特徴的なデザインが人気が高く、現在でも各地域の陶工により作られております。
織部焼の歴史
桃山時代の慶長10年(1605年)頃から現在の岐阜県土岐市付近の美濃窯で焼き始められ、元和年間(1515-1624年頃)に生産された陶磁器です。
大名茶人の古田織部は美濃窯において茶の湯で用いる様々な陶磁器を試行錯誤し製作されました。
そのため、織部焼も当初は美濃焼の一種という見方もされます。
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その中でこの当時に流行していた侘茶とは打って変わるものとして、斬新な形や模様、色の濃い緑釉を大胆に掛けたの織部焼が生み出されていきます。
代表的な窯としては元屋敷窯が挙げられ、美濃の陶工である加藤景延が、大量生産をするために唐津から連房式登窯を導入したと言われています。
開窯直後の慶長年間が最も最盛期で優品の多くはこの時期に焼かれております。
織部焼は1989年に京都三条の中之町から大量の美濃焼が発掘されたことや、扇形などの京風の意匠から、京都から美濃へ発注されていたと考えられています。
当時、京都の三条には陶磁器などを売る道具屋が多くあり、ここを通して織部焼が広がったとされます。
また、織部茶入は各地方に伝わっており、美濃地方の窯だけでなく、九州の薩摩焼や高取焼などでも織部風の焼き物が造られております。
慶長20年(1515年)には創始者である古田織部の切腹を命じられます。
元和年間(1515-1624年頃)に入ると器形と模様が単純化し、これまでの奇抜さは減少していきます。
この時期の代表的な作品は弥七田窯で焼かれた弥七田織部であり、織部焼の特徴である緑釉をほとんど用いず、形も具体的です。
しかし、元和末から寛永初めには青磁の復興を目指し黄緑色や淡青色の御深井(おふけ)釉を用いた御深井焼が本格化することで、織部焼は姿を消していきます。
織部焼の特徴と種類
織部焼はそれまでの茶の湯の陶磁器の常識を覆すような、形、模様、釉薬を用いるのが特徴です。
わざと形を歪ませた沓形の茶碗や、扇子などの形を模したなど具体的なものが多くございます。
模様も市松模様や格子状といった幾何学模様といった自然以外を多くモチーフとして取り入れました。
透明釉に酸化銅を呈色剤に加えた鮮やかな緑釉「織部釉薬」を用い、大胆に掛け分けた品が代表的です。
連房式登窯を用い大量生産されたが、同じ作振りや同じ模様で描かれたものはほとんどなく、陶工により一碗一碗違った茶碗を作るという作陶姿勢が伺えます。
青織部(あおおりべ)
酸化銅を呈色剤に加えた緑釉を掛けたものを青織部と言います。
緑釉を全体に掛けた総織部、掛け分けや鉄絵と合わせた片身替わりなどがあります。
織部焼といえばこの青織部が有名です。
黒織部(くろおりべ)
鉄絵と鉄釉(黒釉)をかけ分けたものを黒織部と言います。
織部黒(おりべくろ)
鉄釉(黒釉)全体に施したものは織部黒と言います。
焼成中に窯外に引き出し急冷する「引き出し黒(ひきだしくろ)」という技法により、釉面に微細なひびが生じ艶消しの軟調の黒色が特徴です。
織部黒はほぼ茶碗のみ作られます。
赤織部(あかおりべ)
鉄分を多く含まれる赤い土を用い、白泥と鉄絵により模様が描かれます。
志野織部(しのおりべ)
志野焼の流れを汲み、同じ技法を用いて製作されます。鉄絵を施した上から長石釉を掛け灰白色の釉調に仕上がります。
藍織部(あいおりべ)
織部焼の中で呉須による青い模様(染付)を施したものを指します。藍織部は作られた数がとても少数です。
当オンライン美術館で見れる織部焼
織部水注
胴は上下に2段に分けられ、長く曲線を描いた注ぎ口、平たい形状のアーチ状の持ち手を備えます。
織部焼の中では類似した形状が多い水注です。
鮮やかで濃い緑釉を大胆に掛け、ムラによる濃淡が織部の魅力です。
胴には鉄絵が描かれ、一面は力強い筆致で上下から花と唐草文、もう一面は橋と鳥が織部らしい愛らしい画風で描かれます。
全体には黄色みがかった透明釉を掛け仕上げます。
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織部黒茶碗
成形したのちに楕円形に歪めた、沓形の茶碗です。
口縁部は波うつように高低がつき、底部は荒々しい削り出しにより輪高台が作られています。
鉄釉を施した茶碗を焼成中に窯外に引き出し急冷することにより、釉面に微細なひびが生じ軟調の漆黒になります。
このような技法を「引き出し黒(ひきだしくろ)」といい、織部黒や瀬戸黒茶碗にて使われています。
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