中国宋代を代表する吉州窯では日本では天目茶碗の窯として有名であり、建窯と双璧をなす窯です。
玳玻天目や木葉天目など手の込んだ天目茶碗は建窯にはない独自性から大変人気を博します。
美しい天目茶碗を生み出した吉州窯の特徴や歴史を、吉州窯の陶磁器の写真を交えて解説いたします。
ページの最後に当美術館収蔵のおすすめの吉州窯の陶磁器もご紹介させていだだきます。
吉州窯(きっしゅうよう)とは
吉州窯は中国宋代を代表する天目茶碗の産地で、現在の江西省吉安にあった古窯です。
吉州の天目は日本では吉州天目と呼ばれる玳玻天目(たいひてんもく)・玳玻盞があり、黒釉と黄釉を二重掛けして模様を作り出す茶碗で名声を博します。
その他にも木の葉天目など人為的な作風のものが存在します。
同じく天目茶碗の産地であった福建省の建窯と双璧をなす存在でした。
南宋から元時代に掛けて最盛期を迎え、天目、青磁、青白磁、鉄絵など、建盞に比べて製品の内容は多彩です。
吉州窯の歴史
吉州窯があった地は隋時代以来、吉州に属していたため吉州窯と名付けられるようになりました。
窯址は現在の江西省吉安県に発見されています。
古くは唐の時代から青磁を焼成してきましたが、宋代には白磁や黒釉磁が主流となっていきます。
黒釉磁は建窯と同様に喫茶の発展により多く作られるようになります。
南宋時代に作られた黒釉の天目茶碗である玳玻盞、鼈盞(べっさん)、木の葉(このは)天目,梅花天目などが後世でも有名になります。
吉州窯は南宋から元にかけて隆盛していましたが、明時代になると衰退をしていきます。
吉州窯の陶磁器の特徴
吉州窯の天目は、建窯と違い鉄分の少ない白い陶土を使用した柔らかい質感の素地です。
天目の器形は鼈口にはなっておらず、建窯に比べて丸みを帯びているものがほどんどです。
高台は径が小さく、高さも2mm程度と低くまた高台内の削り込みも浅いのが特徴です。
吉州窯の天目の最大の特徴は模様にあり、素地に黒釉を掛け、その上に黄釉や海鼠釉を施し人為的に模様を作っていました。
黒釉を施した上に不規則に黄釉を流し掛けたものを、その模様が亀の甲羅と似ていることから「玳玻盞」や「鼈盞」と呼びました。
また、黒釉を施したのち、型紙を置いてその上から黄釉を施したものもあり、鳳凰の模様があるものを「鸞天目(らんてんもく)」と呼び、梅の模様のものを「梅花天目(ばいかてんもく)」と呼びます。
そして吉州窯で有名なものに「木の葉天目(このはてんもく)」というものがあり、これは黒釉の上に一枚の木の葉を乗せ焼成し、本物の木の葉からその模様を写しとった異色作として知られています。
このように吉州窯では自然の造形を取り込むことも特徴出来でした。
当館おすすめの吉州窯の陶磁器
玳玻天目 鸞天目
見込みに1対の鸞と梅花の模様があしらわれています。
この模様は黒釉を掛けたのちに型を置き、黄色の釉薬を二重掛けすることで表現をしています。
一般的に鸞天目は模様の部分を黒く残し周りを黄白色の釉薬にしますが、模様の部分を黄白色にし周りを黒くしていて珍しい品です。
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玳玻天目 鼈甲盞
黒釉の上にもう一度不規則に釉薬を掛け、模様をあしらっています。
その模様が、鼈甲(べっこう)に似ていることから鼈甲盞と呼ばれています。
鼈甲盞は茶色の模様が多く、この茶碗ではように青色も混ざっている模様はとても珍しい品です。
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他の窯の天目天目茶碗も是非ご覧ください
当美術館では吉州窯以外にも建窯や磁州窯、和物の天目茶碗をもございます。
代表的な天目である禾目天目、油滴天目から菊花天目といった和物天目まで数多くの天目茶碗を掲載しております。
また、どの美術館にもない「毫変盞(ごうへんさん)」も掲載しております。
写真はさまざまな角度で撮影し、展示されている美術館では見ることのできない高台(底)までじっくりと鑑賞ができます。
これから美術館をめぐる事前の勉強として知っておくと何倍も楽しむことができますよにもなりますので是非ご覧くださいませ。
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