龍泉窯は中国南宋時代で有名な青磁窯です。
日本では鎌倉時代から室町時代に輸入され皇室や大名の間で「砧(きぬた)青磁」などと呼ばれ愛されました。
全国の美術館でも名品が多く残されております。
日本で最も知名度の高い龍泉窯について、当美術館所蔵の品の写真を用いて解説いたします。
また、当美術館収蔵のおすすめの龍泉窯の陶磁器もご紹介させていだだきます。
ページの最後に龍泉窯の購入や入手の方法も解説いたします。
龍泉窯(りゅうせんよう)とは
中国浙江省龍泉県及びその付近にあった窯で、主に上質な青磁を多く焼造していた中国宋代から元代の代表的な青磁窯です。
唐時代から青磁や黒釉の陶磁器を生産開始し、本格的に青磁の生産に取り組むのは北宋時代に入ってからです。
南宋から明代初期が最盛期であり、淡い釉調の青磁が特徴的です。
龍泉窯の歴史
唐代後期には越州窯にて青磁が作られていたが、北宋時代の中期には衰退をし、青磁制作の中心は龍泉窯に移ります。
北宋時代の末期になると龍泉窯の陶磁器は海外に広く輸出されるようになり、日本にも多く請来しています。
南宋になると技術が磨かれ、灰色がかった白い素地に淡い水色の釉薬がかけられた美しい龍泉窯の青磁は日本でも「砧(きぬた)青磁」と呼ばれ人気がございました。
元時代にも砧青磁は続けて作られましたが、中期になると西アジアやモンゴルからの注文に合わせて龍泉窯ならではの精細な装飾が施された大型の壺などの陶磁器が作られるようになります。
この頃から明の初期の青磁は、室町時代の貿易船である「天龍寺船」で日本へ伝来したことから、日本では「天龍寺(てんりゅうじ)青磁」と呼ばれていました。
同時期に龍泉窯の陶磁器はその技術の高さを評価され、官窯として宮廷用の陶磁器の生産をするようになります。
明代末には陶磁器の流行が白磁や青花に変化する影響で、龍泉窯は徐々に衰退をしていきます。
しかし、この頃にも優れた青磁はつくられており、明の七官という官位の人により持ち込まれたことから「七官(しちかん)青磁」と呼ばれました。
龍泉窯の青磁の特徴
当初は淡い色の青磁釉で皿や碗などの日用品が作られていましたが、北宋時代には緑青色の釉色に変化し、南宋時代には明るい青色のものが増えます。
同時期に青磁窯の南宋官窯と比べ、龍泉窯は陽刻、陰刻、貼花などで精巧な装飾を施したものが多いのも特徴です。
南宋、元、明時代と長い期間稼働しており、その時代に合わせた色や形の青磁に変化していきます。
大きく3つに分かれ、南宋から元の初期に焼かれた「砧青磁」、元から明の初期に焼かれた「天龍寺青磁」、明から清の初期に焼かれた「七官青磁」になります。
南宋〜元代初:砧青磁(きぬたせいじ)
南宋時代にはその技術が高くなり、素地が薄くその上に厚く釉薬を掛けた「粉青色釉青磁」という淡い水色の青磁が製作され始めます。
灰色がかった白いやや磁器質の胎土で、釉薬は澄んだ色で光沢はなく貫入はほとんどございません。
同時期に青磁を焼いていた南宋官窯は胎土が陶器質で黒く、釉薬はガラス質で全体に貫入が入り、同じ青磁でも違いがあります。
この粉青色の青磁は砧青磁と呼ばれています。
元代〜明代初期:天龍寺青磁(てんりゅうじせいじ)
砧青磁に近い色合いですが、やや釉色が黄色みを帯びます。
これは海外からの注文により大量生産がされ、精良な原料が不足したためと考えられます。
そして、西アジアやモンゴルからの注文により、大作主義となり、重量のある大皿や高さ30cm前後の大型の花瓶が増えます。
花瓶などは大型で合ったため、首、胴、高台などのパーツを分けて作られていたと言われています。
印花や貼花など装飾を施したものが多くなり、鉄絵具を上から垂らす飛青磁(とびせいじ)といったものも多く焼かれます。
明〜清代初期:七官青磁(しちかんせいじ)
釉調は大きく変わり、灰色がかった濃い青緑色で光沢が強く、それまでになかった細かな貫入が全体に入るようになります。
前の2つと比べても明らかに釉調が違います。
当館おすすめの龍泉窯の陶磁器
当美術館にある龍泉窯の陶磁器をご紹介いたします。
青磁陽刻牡丹唐草文大罐
蓋のついた大罐で食料などを食料などを保存をするために用いられました。
胴と蓋には全面に陽刻にて牡丹と唐草の模様が施され、透けた釉薬で模様が白く浮かび上がり上品な印象です。
宋代に作られた青磁でこのような釉調は日本では「砧青磁」と呼ばれ、珍重された品です。
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龍泉窯 飛青磁貼花桃文花生
青磁釉の上に鉄斑を散らして焼成したものは、日本では飛青磁(とびせいじ)と言われ珍重されました。
元代になると大型化し本品も高さ34.9cmもございます。
飛青磁は遺例は少なく、中でも本品は肩のあたりに貼花により桃の装飾が付けられる大変珍しい品です。
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龍泉窯 青磁花口獣环耳瓶
龍泉窯の青磁は明代になると緑色(翠青色)が濃く透明感が強まり、これまでにはあまりない細かい貫入が入ります。
この釉は日本では「七官青磁(しちかんせいじ)」称されました。
高さ29.4cmと大型の玉壺春瓶をを基本し、口は花口で首には、獣が輪を咥えた獣环耳(じゅうかんじ)と呼ばれるもので。环耳は青銅器に良くみられた意匠で、装飾が多くなった明代の龍泉窯の中でもめずらしいものです。
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中国青磁はその美しさが世界中で絶賛され、龍泉窯以外にも越州窯、汝窯、南宋官窯、哥窯とそれぞれに魅力がございます。
当オンライン美術館では龍泉窯以外の青磁もたくさん掲載しておりますので、是非、龍泉窯との違いを見比べていただければと思います。
写真も豊富で、美術館では確認の難しい釉薬の拡大や土、高台の様子まで載せておりますので、是非お楽しみください。
下のボタンから青磁の陶磁器一覧を見ることが可能です。
龍泉窯の購入や入手方法
龍泉窯の青磁は鎌倉時代から安土桃山時代にかけて日本に輸入がされており、美術館にも多く国宝や重要文化財にされております。
そういったこともあり、龍泉窯の青磁は今なお日本だけでなく中国においても人気の品となり骨董業界で多く取引されています。
龍泉窯の品は知名度の高さから骨董市や骨董店でも多く見かけることができます。
しかしその反面、近代の模造品も多く作られており本物を購入することが難しいことや、南宋から明時代まで長く作られていたことから時代の間違いが多い品でもあります。
時代が古いほど値段が高くなり、南宋時代の美品となると15万円から20万円台となってもおかしくありません。
元から明時代となると数万円から10万円程度でも見つけることができます。
しかし、1万円から市場に出回っており、そういった比較的安いものは偽物も混ざっているので注意が必要な品になります。
当サイト公式の骨董店でも龍泉窯の青磁の取り扱いをいたしておりますが、自信を持って龍泉窯と言えるものはごく少量です。
しかしながら厳選した良品を取り扱いしておりますので、ぜひ一度参考までにご覧いただければと思います。
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