定窯は中国陶磁の中で磁気質の白磁を最初に完成させた陶磁器と言われます。
象牙質の白色の柔らかな表面に細かな彫り模様が描かれた陶磁器はとても上品です。
宋代五大名窯の一つとされ、朝廷の貢納品ともされるほどの名品を生み出しました。
定窯のその美しさの秘密や特徴、歴史などを当館収蔵の陶磁器の写真を用いて解説いたします。
ページの最後に当美術館収蔵のおすすめの定窯の陶磁器もご紹介させていだだきます。
定窯(ていよう)とは
定窯は中国・宋時代の白磁で有名な窯です。現在の河北省曲陽県澗磁(かんじ)村と燕山(えんざん)村に窯址があります。
晩唐時代の9世紀ごろに開かれ宋代に隆盛を迎えるが、元代以降に衰退をしました。
中国で白磁を生産した名窯として挙げられ、「刻花(こくか)」や「印花(いんか)」といった模様を施した象牙色の白磁が特徴です。
汝窯・官窯・哥窯・鈞窯とともに五代名窯と称えられていました。
定窯の歴史
定窯は華北にあった宋時代の有名な民間窯場です。
窯址は現在の河北省曲陽県澗磁村や燕山村の一帯に広がっています。
窯場の名称は歴史的な州名を冠しており、この地域が唐、宋代に定州という行政区画であったことから「定窯」と呼ばれています。
起源は晩唐と言われており現代に衰退をするまで700年ほど活動しました。
最も隆盛したのは宋代であり、その時期に製作された刻花や印花などの模様が施された白磁はその美しさから高い価値がございました。
その優れた作風は朝廷からも認められ、朝廷のために貢納品としても製作がされていました。
定窯の特徴
唐代の早期には黄釉・褐釉なども制作していましたが、定窯で最も主要な製品は白磁です。
唐代の中期ごろまでは胎土が灰色を帯びていたため、化粧土を使用していました。
その後、晩唐、五代の時代には、胎土が磁器化が進み、純白で硬く焼きしまったものとなり、その上にやや青みのある透明釉をかけて光沢のある美しい白磁が製造されるようになります。
最も有名であるのは北宋の定窯で、この頃には磁器質の胎土で純白で固く焼きしまり、その上にやや黄みの帯びた釉薬が施され、定窯は完成いたします。
北宋以降には五代で培った基礎に加え、器形にも変化をもたらすようになり、その最たるものとして「刻花」や「印花」といった模様で飾るようになります。
以下の技法が発展し、蓮華・草花・水鳥・魚・祥雲・龍などの文様が施されていきます。
刻花(こくか)
生乾きの素地に鉄、木、竹などの施文具を用いて、模様を彫っていく技法です。印花に比べて深く掘ることができ、線の太さや深さを変えることで立体的な作品が生まれます。模様を彫った後に釉薬をかけて焼成をいたします。
印花(いんか)
乾燥する前の素地に、あらかじめ模様を彫っておいた型を判子のように押して模様を作っていく技法です。そのため刻花よりも効率よく模様を作ることが可能でした。型の模様は2通りあり、一つは針状で浅く細い線を掘るもので、写し取られた模様は僅かに浮かび上がります。
もう一つは刀状の工具で模様を彫るもので、針状よりも深く凹凸があり立体的な模様となります。こちらも模様を彫った後に釉薬をかけて焼成をいたします。
劃花(かくか)
生乾きの素地に鉄、木、竹などの施文具を用いて、模様を彫っていく技法で、刻花に似ているが、細い線ぼりで深さや太さに変化がなくその作業自体はさほど複雑でありません。劃花では櫛のような工具で規則的な櫛目の模様を描くなど単調なものも多く、刻花と併用して補助的に使用をされることがほとんどでした。
宋代の他の五大名窯は釉色や形状の美しさやが評価を得たのに対して、定窯は刻花や印花といった精巧な模様の装飾技法が評価をされています。
器形は鉢や注水、平底碗が初期には多く、徐々に茶道具や皿、香炉などが焼かれ多くの種類がございます。
白磁で有名な定窯ですが、その他にも黒釉や柿釉、緑釉なども定窯では作られています。
当館おすすめの定窯の陶磁器
白磁で有名な定窯、その美しい作品を当美術館の所蔵のものから紹介いたします。
定窯 白磁印花草花文盤
北宋定窯の磁器質の胎土で純白で固く焼きしまり、その上にやや黄身の帯びた釉薬が施されます。
器面に施された模様が特徴的で、道具を使って模様を彫る「刻花」と型を使って模様を押す「印花」という2種類の技法が使われます。
見込みは刻花が使用され、中央に草花文、その周りを蓮弁文が一周し、さらに草花文が6点、最外周には雷文が施されます。
外面は印花にて唐草文がうっすらと施されており、器面全体がとても豪華です。
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定窯白磁 僧型水注
僧の形状をした水注で、顔や服に定窯の装飾技法を用いて模様が彫られています。
本体頭部に穴が開いており、中が空洞で水柱として使用でき、そうの咥えている笛はとても薄くてきており精度が高いです。
透明釉薬のほか、模様として黒釉も用いられており、とても愛らしい品です。
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