唐三彩(とうさんさい)とは|唐代に焼かれた三色の副葬品の特徴や歴史

唐三彩は中国の唐代に焼かれた三色の釉からなる彩色陶。
金属を用いた釉薬により緑・赤褐色・藍色・紫といった鮮やかな色が特徴です。
ラクダや馬、人物といった他の中国陶磁ではなかなか見ない独創的な品を多く残し美術品として高い評価を受けています。
そんな唐三彩の釉薬や形、歴史について解説いたします。

唐三彩(とうさんさい)とは

唐三彩猿付馬

唐三彩の馬

唐三彩は中国唐代(608~907年)に焼かれた三彩の総称です。
三彩とは金属を触媒とした色釉を施し低い火度で焼成し軟陶のことです。
炎色反応により現れる色が三色であること、もしくは多色(多彩)であることを指して三彩と呼ばれます。
褐釉と緑釉を掛けた三彩に近いものは漢代にはありましたが、唐三彩は純白色の陶土を使用していることが特徴です。
唐三彩の多くは鉛や銅、鉄の釉薬を使用した緑・黄色(赤褐色)の二色と、土の色の白が合わさった三色が主流です。
他にもクリーム色、藍色、紫などがあり、4色、5色の品もございます。

唐三彩では主に副葬品、侯貴族の墓へ埋葬される品が主に焼かれました。
形状は器だけでなく、人物、動物があり、これは死者があの世に行っても困らないように生活に必要なものを模ったとされます。

唐三彩の歴史

唐三彩は7~10世紀に焼かれ、盛唐三彩と中・晩唐三彩に分けられます。
北斉時代(550~577年)の白釉緑彩陶の流れを受け、則天武后の時期の武周革命(690~705)の盛唐の時期に成熟しました。
盛唐は厚葬の風習があり、貴紳の墓に副葬するための明器(めいき)が作られます。
唐三彩の発見は1900年代に行われており、鉄道工事の際に掘り起こした唐代の墳墓から大量の彩色陶が見つかりました。
唐三彩という呼称は発見された際の論文の「three-color glaze」から生まれます。

発掘を機に美術品の価値が高まり、広く発掘や盗掘がされるようになります。
唐の都であった長安、洛陽を中心に広い地域で出土し、674年の唐初代皇帝の墓からも発掘されております。
特に696年の契苾明(けいひつめい)墓から出土した三彩馬、三彩駱駄などはその装飾や鮮やかな色は盛唐の副葬品としてとても素晴らしい品とされます。

しかし、中・晩唐となると貴族文化が衰退し、唐三彩も大きく変わり、主に食器をちゅしんとした日用の器皿が作られるようになります。
中国では宋三彩や遼三彩、元三彩、明三彩など後の時代に伝わり、法花(フアーホワ)、交趾(こうち)焼などへの技術にも影響を与えます。
一部は海外へも輸出されるようになり、日本でも奈良三彩が生まれる他、趾焼焼は桃山時代に京都の長次郎が手本にして楽焼を焼いたともされています。

 

唐三彩の特徴

唐三彩は2回にわたって焼かれていたと考えれております。
1回目は白色の陶土を形成したのち窯の中で1000~1100度で素焼きし、2回目は各種の釉を施して850~950度で焼かれます。
色は釉薬に含まれる金属による炎色反応で、銅(緑)、鉄(赤褐色・黄色)、コバルト(藍色)、マンガン(紫)、アンチモン(クリーム色)によるものです。
助燃剤には鉛やアルミニウムを用いることから鉛釉と呼ばれます。

唐三彩猿付馬

唐三彩の代表的な釉薬/白釉、褐釉(黄釉)、緑釉

形状は多種多様で、特に人形のものを俑(よう)と呼びます。
有名なものでは人物が多く、武将や貴婦人の他、天子、文官、芸人や馬を引く人などがございます。
動物も多く、馬、駱駝(ラクダ)、牛、羊などがあり、副葬品として死者のことをとても手厚くしていたことわかります。
器物にはお碗、壺、皿のほか容器、文房具などがございます。

当美術館に掲載の唐三彩

唐三彩猿付馬

唐三彩猿付馬

馬は唐三彩でも代表的な形で、右前足を高く上げ、筋肉隆々とした力強い表情で立ちます。
黒釉が施された黒馬で、鬣(たてがみ)が白釉で表現され、その合間から凛々しい褐釉の耳が現れます。
鞍や馬絡は随所に飾りをつけ、褐釉と緑釉で彩られます。
特に注目すべきは鞦(しりがい)に貼花で付けられた猿の意匠で、三彩馬は類例を見ません。
猿は馬の守神として信仰されており、インドから中国に伝わったものと考えられています。

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伊山大策

名古屋ビジュアルアーツ写真学科在学中より瀬戸焼の陶芸作品撮影を続ける。11年前に愛知の古美術研究にて陶磁器の知識を学ぶ。写真スタジオに3年勤務したのち、広告やWEBサイトの制作を手掛けその経験を活かし、古陶磁美術品の良さを広めるために当サイトを開設いたしました。

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